半月板の症状や治療について

膝のスポーツ外傷として多い疾患ですが、お年を召した方の加齢変性が原因で生じることもあり、若い方から高齢者まで発生します。近年では画像診断技術が向上し、関節鏡視下手術とともに、治療方針も大きく変わってきます。

原因とメカニズム

半月板に過剰なストレスや外傷などの強い衝撃やねじれが加わると、半月板の一部が大腿骨と脛骨との間に挟まり、ひびが入ったり、欠けたりします。損傷の形は様々で、断裂形態によって縦断裂・横断裂・水平断裂・弁状断裂(合併型)と4種類に分類されます。

半月板損傷の原因は主に2つに分けられます。1つは運動などによる外傷が原因で、半月板のみが損傷する場合と、前十字靭帯などに合併して起こる場合があります。もう1つは加齢による半月板そのものの変性が原因で、変形性膝関節症を合併している可能性もあります。50代以降では、軽微な外傷でも半月板損傷が起こりやすくなります。

半月板 比較

症状

⚪️受傷直後に痛みがあり、痛みは治るが、動かすと再び痛みがでる。
⚪️歩行時に急に力が抜けて膝がガクンとなる。
⚪️しゃがみこむ動作、階段の昇降で膝に引っかかり感がでる。
⚪️膝に水がたまる。
⚪️膝を曲げたあとに伸ばす動作ができない状態(ロッキング)になる。

検査・診察

触診・評価テスト

医師による診察にて膝関節の触診では、大腿脛骨関節面や、膝蓋骨の周辺を指で押して痛みが生じる場所を確認します。膝関節の疾患は関節の隙間の状態を触って調べることができ、また圧痛点と病変部位が同じことが多いのが特徴です。

膝の腫脹や熱感がみられるときは、膝蓋骨のまわりを触って滑膜の肥厚の程度を調べ、膝蓋跳動テストを行います。また関節を動かすことで疼痛誘発テスト、関節可動域等を評価します。その他、側副靱帯に関しては外反ストレステストや内反ストレステスト、十字靭帯に関してしては前方引き出しテストや後方引き出しテスト、半月板にはアプレイテスト、マクマレーテストなどがあります。

レントゲン検査

半月板損傷はレントゲン(単純X線) 写真にはうつりませんが、基本的な膝関節の状況を把握するためには有用です。

関節造影検査(Arthrography)

レントゲン透視下にて、関節内に局所麻酔剤と造影剤を注入して関節内の異常を調べる方法です。関節造影ではレントゲンでは写らない関節腔の形状、広がりを明らかにすることで、滑膜の増殖や関節面の不整、相対する関節面の適合性、靭帯損傷などによる造影剤の漏出などを調べることができます。

MRI検査

半月板の損傷形態は縦断裂・横断裂・水平断裂などがあり、また損傷部位や程度により治療方法が異なります。MRI検査では半月板の損傷状態が確認できますので、治療方法を決定するためにも有用です。

治療法

保存療法

半月板の断裂が軽症の場合(断裂箇所が辺縁部内で1㎝以内の縦断裂)はまず保存療法を行います。日常生活においては、膝に負担のかかる正座や激しい運動を制限します。また症状に応じて、膝関節に溜まった関節液を注射器で吸引したり、ヒアルロン酸やステロイド等の関節注射を行います。

炎症が強い時は、アイシングをしたりサポーターで関節を保護します。受傷から時間が経ち炎症が落ち着いている時期であれば、関節可動域を広げる訓練や筋力増強の訓練を行います。

手術療法

半月板の損傷部位が大きい場合や自然治癒が期待できない場合は手術が適応となります。手術には半月板縫合術もしくは半月板切除術があり、関節鏡視下で行われます。

⚪️関節鏡視下半月板縫合術
半月板辺縁部の断裂は、血流が豊富なため治癒を期待して縫合術を選びます。縫合術の成功率は75〜90%と高確率ですが、手術をして4年後に再断裂する方が30%の割合でみられます。

半月板縫合術

⚪️関節鏡視下半月板切除術
半月板がダメージを受けてから時間が経過している場合では、半月板が変性(質が悪くなる)していることがあります。このような状態の半月板は治癒能力が低く、縫合術を行なっても治癒しない可能性が考えられるため、切除術が検討されます。また高齢者の方や水平断裂、または横断裂の場合も切除術を行います。

ただし切除術の場合は、半月板の面積が小さくなく分、変形性膝関節症に移行する確率が高くなります。最近の臨床報告では切除術を受けた10年後の症例のうち、一般の方で30%、スポーツをしている方で70%が変形性膝関節症になっています。

半月板切除術

まとめ

半月板損傷は若年者から高齢者まで起こる疾患で、損傷の程度によっては手術が適応となる場合もあります。半月板の手術は関節鏡による治療が可能であり、体に負担が少なく入院期間も短くてすみます。その反面、術式によっては変形性膝関節症になる可能性もあります。

最近では手術をせずに半月板を修復する再生医療も進歩しており、様々な治療の選択肢が増えています。自分の血液や細胞を使う再生医療では副作用も少なく入院の必要もありませんので、手術を受けることに抵抗がある方は再生医療を検討されるのも良いかもしれません。

 

No.0023

監修:院長 坂本貞範

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