テニス肘の症状や治療法について

テニス肘とは

テニス肘の正式名称は「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」と言います。テニス肘はテニスプレイヤーに多いとされていますが、家事や日常生活の行動が原因で発症することも多く見られます。

症状が軽いうちは痛みがすぐおさまるので、そのまま放置されることがあり、慢性化すると骨の不正像や石灰化像などが見られ、難治化することもあります。同じスポーツ障害として有名なゴルフ肘が肘の内側に痛みが出るのに対し、テニス肘は肘の外側に痛みが出るのが特徴です。

症状と原因

テニス肘の症状や治療法について

じっとしている時に痛みはほとんどなく、「ドアノブを回す」「タオルを絞る」「重いものをつかんで持ち上げる」「フライパンを振る」「キーボードやマウスの操作」といった動作を行うことで、肘の外側が痛むようになります。

テニス肘は上腕骨外側上顆と言われる肘の外側の出っ張りによく痛みが出ますが、前腕や手首にも痛みが広がることもあります。また手首を手のひら側に曲げて筋肉を伸ばすと痛みが出ますが、手の甲側に手首を曲げてもあまり痛みが出ないのが特徴です。

テニスではラケットにボールが当たる際、短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)と言われる筋肉に衝撃がかかることで、その筋肉の付け根にある上腕骨外側上顆にストレスがかかり痛みが出てきます。
さらにラケットを振る動作や、ボールを打つ動作の繰り返しによる「使い過ぎ症候群」(オーバーユーズ)も原因の1つと考えられています。

スポーツではテニスに限らず、バトミントンや卓球といったラケットスポーツを行う人に発症することが多い障害であり、年齢別に見ると30代〜50代に多く発症しています。

この上腕骨外側上顆に付いている腱は、血行が乏しいため治りにくい疾患であり、また一度脆くなった腱は元の状態には戻りませんが、安静にしていると痛みはおさまることが多いです。

徒手検査法

疼痛を誘発する試験を行います。臨床では以下の3つの検査が一般的に用いられています。

Thomsen(トムゼン)テスト

①患者さんには肘を伸ばした状態で、手首を手のひら側に曲げてもらい、検者は患者の手を把持します。

②患者さんに手首を真っ直ぐになるよう力を入れてもらい、検者はその力に抵抗して手を押さえます。

Chair(チェア)テスト

患者さんに肘を伸ばした状態で、イスを上からつかんで持ち上げてもらう。

中指伸展テスト

①患者さんに肘を伸ばしたまま中指を伸ばしてもらう。

②検者が中指を上から押さえるのに抵抗して、患者さんに指を伸ばしてもらう。

これらのテストによって肘の外側に痛みを感じた場合、検査は陽性となります。

画像診断

レントゲン検査

テニス肘は腱の炎症であるため、基本的にレントゲンでは骨に異常がみられることはありません。

ただし慢性化している場合は、炎症を起こした腱にカルシウム等が溜まり、石灰化している部分がレントゲンに白く写ることがあります。

MRI検査

関節の中の滑膜ひだや、筋肉の付着部の状態を詳しく調べるために行うことがあります。

超音波検査

レントゲン画像には写らない筋肉や腱、内出血軟部腫瘍などを発見することが可能です。

治療法

症状が落ち着くまでは、安静を心がけて肘に負担をかけないようにしましょう。

治療法は痛みや症状により異なります。

痛み止め薬(湿布、内服薬)

症状が軽い場合は患部を安静にし、NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)という飲み薬や湿布をすることで症状が改善します。ただし、飲み薬は長期にわたり服用すると消化器系への副作用があるので、注意が必要です。

ステロイド注射

日常生活に支障をきたすほど痛みが強い場合は、ステロイド注射による治療が効果的です。痛みある部位に直接注射をすることで、翌日にはかなり痛みが改善され、1〜2ヶ月程度は効果が持続します。ただし、ステロイド注射は腱断裂や腱障害になるリスクがあり、短期間での頻回投与、高容量の注射は避けなくてはいけません。

強い痛みであっても一度の注射で楽になることがありますが、6ヶ月以上の長期的な効果はないと言われています。

手術

軽症の場合は保存療法、薬物療法、理学療法で痛みがおさまります。しかし症状が進行している場合は手術を検討します。

関節鏡による手術
「関節鏡視下手術」は直径1〜4mmの細いカメラを関節内に挿入し、痛みの主な原因とされている短橈側手根伸筋の腱の損傷部分を切除します。これは上腕骨外側上顆炎の中でも症状が重く、難治化している場合に行われます。

運動器カテーテル治療
テニス肘で痛みのある部位を顕微鏡でよく見ると、血管の周りにうねうねした白いものがたくさん見えます。この「白いうねうねしたもの」は神経繊維であり、血管の周りに増えてしまった「もやもや血管」と呼ばれています。

人間の身体は神経と血管がセットになって増えるため、血管が増えるとそれに伴い神経繊維も一緒に増えます。また痛みの原因は増殖した血管というより、血管の周りに増えた神経繊維によるものと考えられます。

カテーテル治療とは細く柔らかいチューブ(0.1〜0.8㎜)を手首の動脈に入れ、肘の血管まで到達させた状態で、目的となる血管の造影を行い、抗生物質(イミペネム・シラスチタン)を投与します。血管内に神経は存在しないため、カテーテルを挿入し、進入させている時は痛みを感じません。この抗生物質がもやもや血管と共に増殖した神経繊維を消失させることで、痛みは緩和されます。

局所麻酔を打つ際はチクっとした痛みはありますが、手術中の痛みはほぼありません。治療時間は30分程度なので、日帰りでの手術が可能です。

PRP治療(platelet-Rich-Plasma)

PRP治療は、患者様ご自身の血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を患部に注射する再生医療です。これは、血液の中の血小板成分を高濃度に抽出する治療法です。血小板には止血の役割とともに、成長因子を放出して傷ついた部分を修復する働きがあります。PRP治療では基本的にご自身の血液から作成いたしますので、副作用は少ないと言えます。

場合によっては、注射後に一時的な腫れや痛み、赤み等の症状が起こることがあります。これは血小板の成長因子が、患部の細胞に働きかけて作用している証拠でもあります。こう言った注射後の腫れや痛みは、数日〜1週間程度で落ち着きます。

治療の効果はすぐに感じられることが多く、スポーツや職場に早く復帰したい方にはメリットの大きい治療法です。

セルフケア

テニス肘の症状や治療法について

ストレッチ

①ストレッチする側の腕を前に突き出す。

②親指を下にして肘を真っ直ぐ伸ばす。

③反対側の手でストレッチをする側の人差し指と中指を手前に引っ張る。

④30秒〜1分間ほどのストレッチを、1日3セット行う。

アイシング、サポーター

まずはスポーツや負担の原因と思われる作業を控えましょう。

痛みが出始めた急性期では、氷などで患部を冷やすことで炎症を鎮めることが出来ます。ただし、慢性化した肘にアイシングは逆効果となることがありますので注意が必要です。

またテニス肘はテーピングやサポーターを使用することで、装着することで肘関節の可動域を抑制し、痛みを軽減することができます。テーピングやサポーターは病院でも処方されますが、スポーツ用品店やネットでも購入が可能です。

 

No.0011

監修:院長 坂本貞範

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