肩の痛み

肩の腱板とは一体なに?

腱板とは肩甲骨から上腕骨(肩の骨)につく筋肉のことを言います。

棘上筋(きょくじょうきん)
肩甲下筋(けんこうかきん)
棘下筋(きょっかきん)
小円筋(しょうえんきん)

腱板はこれら4つの筋肉から構成されており、まとめて回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)またはRotator cuff(ローテーターカフ)と呼び、肩を動かす重要な役割を果たしています。

肩腱板損傷(断裂)では、発症の原因が「急性断裂」と「変性断裂」の2種類に分かれます。

腱板損傷

急性断裂

転んで肩を強く打ってしまったり、重い荷物を持ち上げた時など、外傷によって断裂が起きることがあります。

変性断裂

変性断裂で1番多いのは、加齢によるものです。加齢に伴い腱板の血流が減少し、脆くなって擦り切れたりします。喫煙も血流を阻害する為、腱板断裂のリスクが高くなります。他にもラケットスポーツ、野球など肩を使う反復動作、洗濯物を干す、布団の上げ下ろしなど家事や日常生活のなかでの肩の使いすぎ(オーバーユース)も原因の一つとされています。

また加齢とともに骨がトゲのように変形する骨棘(こつきょく)が見られる場合があります。この骨棘が肩峰(けんぽう)と呼ばれる部分に見られると、腱板が通る肩関節の隙間が狭くなります。すると、腕を挙上した際に大きくなった骨棘と腱板が衝突することがあり、これをインピンジメント徴候と言います。痛みがない場合は経過観察としますが、痛みがある場合は腱板断裂になりやすく、引っ掛かりの原因となる骨棘を切除する手術が適応となります。

肩腱板損傷の症状

⚪️肩を動かすと痛みや引っ掛かりがある。
⚪️痛みで夜眠れない。寝返り時や患部を下側にすると痛みが増す。
⚪️腕を後ろに回し、背中を触ることができない。
⚪️肩を挙上する時、または挙上した位置から下す時、60°〜120°の角度で痛みを感じる。
※有痛弧徴候(ゆうつうこちょうこう)またはpainful arc sign(ペインフルアークサイン)と言う。
⚪️急性断裂では「プチッ」「バキッ」といった断裂した時の音が鳴ることもある。

四十肩・五十肩との違い

肩腱板損傷とよく間違えられるのが、四十肩・五十肩です。四十肩・五十肩は関節の動きが硬くなる拘縮というものが多く見られます。それに比べ、肩腱板損傷では腕を挙げるときに力が入りにくかったり、腕があげられないことはありますが、拘縮が見られることは少なく、痛みのない方の手で支えると腕が上げられることが多いです。治療法は疾患によって変わってくる為、疾患を見分けることが重要となります。

徒手検査法

肩腱板損傷が疑われる患者様に行うテストが幾つかあります。
これは肩周辺の筋肉や動かした時の痛みがあるかどうかを見ています。

有痛弧徴候

患者様が腕を挙上するとき、または挙上した位置から腕を下ろすときに、約60〜120度の位置で肩の痛みが生じる現象。痛みが出現すると肩腱板損傷テスト陽性となる。

Drop arm sign

医師が腕を持ち上げそこから手を離したときに、上がった腕をキープできなかったり、痛みが出現すると陽性となり、腱板断裂により肩を支えることができないことを表す。

インピンジメント徴候の有無を確認する検査法

① Neer(ニアー)法
患者様の後方に立ち、肩甲骨を上から押さえつつ、もう一方の手で肩を内旋位で他動的に上げる。痛みがあれば陽性となる。

② Hawkins(ホーキンス)法
医師が肘を90度まで外転し、内旋を加えたときに痛みがあれば陽性となる。

画像診断

レントゲン(肩)

レントゲン(単純X線)検査

肩に痛みがある場合、レントゲン検査がよく行われます。しかし、レントゲン検査では骨しか写らず、筋肉の腱である腱板は写りませんので、しっかりとした診断はできません。

但し、腱板断裂を起こしている場合、腱の厚みが薄くなり、関節の隙間が狭くなっていることがあります。また骨の変形である骨棘なども確認できます。

MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)

靭帯や筋肉など軟部組織の損傷を確認することができるため、腱板が損傷している場所や程度を確認できます。

超音波検査(エコー検査)

靭帯や筋肉など軟部組織の診断に有用です。MRIやCTと違うところは、肩を動かしながら超音波の機械を当てると、筋肉・腱・靭帯の動的な様子を観察することができます。

症状が似ているため鑑別が必要な疾患

肩峰下インピンジメント症候群
変形性肩関節症
リウマチ
石灰化腱炎
肩手症候群
肩峰下滑液包炎
上腕二頭筋長頭炎
四十肩、五十肩 (肩関節周囲炎、凍結肩)

治療

注射

肩腱板損傷については大きく分けて、保存療法(内服薬、注射、リハビリ)と手術療法があります。

保存療法

⚪️安静
必要に応じて、三角巾で肩関節を動かさないように固定します。また肩を使うスポーツや仕事の制限をされる場合があります。

⚪️内服、湿布、塗り薬
薬物療法では肩腱板断裂による炎症を抑え、痛みを軽減します。一般的には鎮静作用、抗炎症作用、解熱作用を有する非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)の内服、湿布剤を処方を行います。

⚪️関節内注射
① ステロイド注射
痛みや炎症が強い場合、関節内に強い抗炎症作用のある副腎皮質ステロイド注射を投与します。

② ヒアルロン酸ナトリウム注射
関節包の内部にある透明で粘り気のある液体を関節液と言います。この関節液は関節をスムーズに動かすための潤滑液の役割と、衝撃を吸収する役割があり、主成分がヒアルロン酸ナトリウムでできています。関節内のヒアルロン酸は年齢とともに減少していき関節痛の原因になります。そこで関節液に近いヒアルロン酸を注射して補うことで、関節液の粘り気や弾力性が回復され痛みが改善されます。

⚪️リハビリ
痛みによって動かせなくなると、関節が硬くなっている場合が多いので、硬くなっている筋肉など軟部組織を対象にストレッチを行い肩関節の可動域を調整します。

手術療法

保存療法で改善が見られない等の場合には、肩関節鏡視下手術が行われます。

内視鏡を使った腱板断裂の手術は関節鏡視下腱板修復術(arthroscopic rotator cuff repair:ARCR)と呼び、断裂した腱板を上腕骨頭にくっつける手術です。スーチャーアンカー(糸付きビス)を上腕骨に埋め込み、その糸使って断裂した腱を骨の中に縫い合わせ固定します。手術に使うアンカーは直径約5㎜のチタン合金やPLLA(吸収素材)、あるいはPEEK(医療用強化プラスチック)製を使用し、一生抜く必要はありません。

小さなカメラを関節に入れる「鏡視下手術」は、皮膚や筋肉を切開する「直視下手術」と比べると身体への侵襲が少なく、「直視下手術」では確認が難しいとされている関節内を確認することができ、同時に処置も可能です。

手術後は修復した腱板筋への負担を軽減するために肩外転装具を装着して日常生活を過ごすことになります。装着期間は3〜6週間で断裂の大きさによって変わります。

 

 

No.0016

監修:院長 坂本貞範

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